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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2021.12.09(口と耳と電波)

何かを書くということに意識的になると、同時に話すことにも意識的になる気がする。すると思うのは、"話し方は作られる"ということだ。その時に属してるコミュニティによって自分の話し方は大きく変わる。ような気がしている。それはもっと言えば、耳に入ってきている言葉によって自分の話す言葉も少しずつ変わっていくものだと思っている。

今いる職場で報告会をしている時に抱えている案件の物流の流れを自分が説明すると、上司が「どこがクリティカルなところ?」と聞いてきた。「5人の審査員が同じ札上げたってことですか?」と聞き返しこそしないものの、自分の中でクリティカルと聞くとフリースタイルダンジョン的なそれしか浮かんでこない。後から調べると、スケジュールやタスク管理においてクリティカルポイントみたいな概念は確かに一般的に存在していて、何も変な言葉ではないけれどいかんせん自分には馴染みがない。「どこが重要?」って聞いてくれればいいじゃん。と思う。あとは"律速"とかもよく使う。話を戻すと、きっと自分も数ヶ月後とかにはこういう言葉を当たり前のように使い始めるということ。それが、場の言葉の怖さみたいに思う部分もある。きっと5、6年前の自分の話し方と今の自分の話し方だって大きく違う。日々、言葉を交わしてる人の言葉や話し方で自分が作り変わっているような気がしてちょっとゾッとするときがある。自分は影響を受けやすい性格なのもあって余計にそう思う。と、まぁそんなつまらない話はどうでもよくて。そんなふうに考えていくと自分の話し方の遍歴というかルーツってどこにあるんだろう。耳にしてきたものを振り返ってみると、改めて自分はラジオやPodcastに深く関わってきたと自覚させられる。

家族で車で出かけるときは基本的にカーステレオからラジオが流れていた。それが好きだったのをなんとなく思えている。今でも覚えているのは、1年前に閉局してしまった新潟のFM-PORTという局のお昼のカウントダウン番組「J's COUNTDOWN」だ。パーソナリティのタカハシカナコさんの喋りが好きでラジオ付きのSONYのMP3プレーヤーで毎週聞いていた。ストレイテナー椿屋四重奏を知ったのはその番組だった。最終回を迎えたときは号泣しながら聞いた。もう10年以上前のこと。あとは、受験勉強の合間に聞いた、「SCHOOL OF LOCK!」と「ラジアンリミテッド」も忘れられない。ロックのスペルはエルオーシーケー。トッパ。遊びの講師RIP SLYME先生。ヤングフラッグ。3つ上の姉と同じ部屋で勉強しながらMDコンポから流した記憶と石油ストーブの匂いが強く結びついている。

そこから少し間が空いて、YouTubeか何かでJUNKのバナナムーンを聴いた。でもちゃんとAMラジオを週に一回、深夜に聴く術がなかったのでひたすら本放送ではなくてPodcastを聞いていた。初回からPodcastだけをひたすら聞いた。おもしろい空気で話すということが身についたのは間違いなくここだと今でも思う。あとは多分同じ時期に「水曜どうでしょう」に出会った。これは偶然深夜にテレビつけたら再放送がやってた。ジャングルリベンジの回だったのでかなりの後追い。これもめちゃくちゃ違法な手段で昔の回を掘ってみた。ありえないほど違法だけど、YouTubeにあがってるそれを音声だけ抜いてiPodに入れて夜寝ながら音だけ聴くみたいな、意味わからんくらい違法かつ本来の魅力を損なうような触れ方をしていた。でもあのひたすらダベる感覚と大泉洋の話ぶりには多分に影響を受けている。

当時は数少ないPodcastのお笑いコンテンツを漁ると辿り着いたのが「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」だった。これも同様、本放送とは別に上がっているPodcastをひたすら漁って聞いた。これは冗談抜きでPodcastだけを3周以上聴いている。今でも聞けるけど、過去回はごっそり抜けているので悲しい。気付いたら本放送を追い始めるようになった。これも多分めっちゃ違法。今でこそradikoこそが至高でYouTubeに上がる違法動画に対するアンチは消えないけど、エリアフリーもタイムフリーもない当時はここに縋るしかなかったと言い訳したい。ガイルガーゴイル、ぬけさく、おもちもちもちももち、さんぺい、サイコボックスに入れられたリスナーの上位陣のメールは今でもふと思い出すくらいには覚えている。2部から1部に上がって、また2部に戻って最終回を迎えたとき、本当に受け入れられなくてTBSラジオに抗議めいたメールを送ったのは完全にヤバい自分のエピソードです。そこからあまり間を空けずに「D.C.GARAGE」が始まって、急激に世界は広がり今に至るという感じです。そんな風に締めるにはちょっと語り足りない気もする。「ウィークエンドシャッフル」の宇多丸さんの語りにもめちゃくちゃ影響受けている気もする。現在進行形で言うと、今の自分の言語感覚を形成しているのは間違いなく「奇奇怪怪明解事典」と「POPLIFE THE PODCAST」だと言い切ってもいい。昔を思うとPodcastが今やこんなに市民権を得てコンテンツで溢れてるなんてちょっと信じられない。

なぜこんなことを振り返ったのか。ただ聞いていたものかもしれないけれど、少なからずでも確実に自分の何かに深く根付いて影響しているということを思い出したかったのです。