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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

ホームシック衛星2024に寄せて

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基本的にアーティストやバンドの活動として、"リバイバル"という概念はあまり好まない。もっと噛み砕けば、過去作の再現ライブや、人気投票で演奏する曲を決めるライブ、に正直興味がない。アーティストなんて最新作が一番良くあるべきだし、今が一番かっこいい状態であってほしい。そういう音楽しか好きになれない。

 

しかしだ。BUMP OF CHICKENが"ホームシック衛星"というのなら、それは特別な目で見ざるを得ない。

"ホームシック衛星"とは2007〜2008年にBUMP OF CHICKENが、アルバム『orbital period』をリリースした後に全国のライブハウス周ったツアーである。以降、同2008年に全国のアリーナを周った"ホームシップ衛星"も存在するが、ここではその二つを総じて"ホームシック衛星"と呼称したい。何故なら、BUMP OF CHICKENが活動28周年を迎える今年、"ホームシック衛星2024"というツアーが開催されるからだ。なぜ28周年なのかの説明はめんどくなってきたので「公転周期」もしくは「28年周期」で検索してください。

2006年に『supernova/カルマ』のリリースでBUMP OF CHICKENの存在に初めて触れた私は過去作を聴き漁り、毎日のようにホームページにアクセスし、Takahashi Diary(当時マネージャーの非常に杜撰なブログ)を読み込み、新曲はまだかまだかと心待ちにしていた。ネットに転がるガセの新曲タイトルに釣られて、翌日友達に吹聴して歩いたことは若気の至りとして許してほしい。

結果として、丸一年彼らの活動の音沙汰はなく、一年後の『涙のふるさと』リリース、そこから更に約一年後の『花の名』『メーデー』のリリースまでの期間というのは、思春期真っ只中の中学生にはとても長く待ち遠しい時間だったのだ。

そうして渇望した先にリリースされたアルバムが『orbital period』だった。物の喩えではなく、朝起きては聴き、こっそり学校にイヤホンとiPodを持って行っては下校中に聴き、ベッドに入っては聴きながら寝た。ある人は『THE LIVING DEAD』がそうなように、『ユグドラシル 』がそうなように、自分にとって『orbital period』はそのくらい身体に染み付いたアルバムだった。

そんなアルバムを引っ提げたツアーがある。ライブがあるというのを知った。行くしかないと思った。新潟は朱鷺メッセというアリーナが会場だった。公演日は4月12日。その日はボーカルの藤原基央の誕生日だった。

その所以もあってか、当時ありったけの知識とネットワークを駆使してもチケットはまったく取れなかった。最後の最後に、ローカルネットのラジオ局が行っていた抽選を勝ち抜きなんとか友達の分も含めて4枚のチケットを手にした。その時には中学を卒業し高校生になっていた。

あまり使わない電車を使って会場に行き、列に並んだ。なんだかよくわからないままにTシャツ、タオル、リストバンド、キーホルダーを買った記憶は今でも鮮明に覚えている。サプライズで当時29歳になった藤原基央の誕生日を祝うTシャツが販売されていた。流石にこれはダサい、というか着れないという思いが働き、買わなかったけれど、今では素直に記念に買っておけばよかった。と思っている。見直したけど改めてやばい。

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縦長の会場の、めちゃくちゃ後ろのブロックだった。それでも初めて体験する"ライブ"という空間にはいちいち面食らった。正直言って、その時に聞いた曲の印象や詳細はまったく覚えていないけど、曲間にメンバーの名前を呼ぶ声や、音楽に合わせて手を振るというライブ特有の周囲の人の動作に、そういうものなんだ。変なの。と思った記憶はある。でも必死に真似してやってた。

ずっと聞いていた音楽を作った人が、演奏していた人が、歌っていた人が同じ空間にいた。ということが信じられなくて、翌日の朝起きた時にぼーっとしてしまった記憶も強く残っている。それ以降、BUMP OF CHICKENに限らず様々なアーティストのライブに行くことになるけれど、この日の記憶は迸る電気のように今でも身体に残っている。いつのまにか自分は当時の彼らの年齢を越えてしまった。住む場所も変わり、当時持っていたものを無くしてしまったかもしれない。でも、当時と同じ名前を冠したライブに、同じような気持ちで向かうことができるのは、やっぱり凄いことなんじゃないかと思う。何かを好きでい続けることが意外と難しいということは、時間と年齢を重ねて少しだけ分かったつもりだ。だから、それはやっぱり自分のことも少し誇らしく思いたい。よくここまで生きてきたな自分。よくここまで辿り着いたな自分。

明日、初日を迎えるホームシック衛星2024がどんなライブになるのか、それはまだわからない。当時やっていた曲を沢山やるのか。そしたら嬉しいなぁとは思うけど、正直あんまり拘ってもいない。結果的に最近の曲を沢山やるライブになってもいいと思ってる。時間が進むっていうのはそういうことだし、ノスタルジーにしがみつくみたいなことは絶対にしたくない。2008年の自分から2024年の自分に応答願ウ。どうかかっこよくいてくれ。