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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2019.08.28

スーパー銭湯に備え付けのリンスインシャンプーは髪がギシギシになる。いつの時代もそう。どれだけ空に電波が張り巡らされようが、四角いリュックを持った配達員が家まで食事を届けてくれるようになろうがそれは変わらない。やっぱりギシギシは嫌なので、いつも行く前にコンビニに寄って使い切りセットを買う。レジに行くと緊張と焦りで明らかにたどたどしい今日からレジのバイトを始めたであろう青年が立っている。隣にはその青年とそう年齢の変わらない女の子が指導役よろしく立っている。自分の買ったシャンプーとスポーツドリンクを一つずつピッとしていく青年。353円です。と告げる。1053円を出す。お金を受け取ってそれをひとまずどこに置いたらいいかと迷いながらチーンとレジを開く。(チーンとは言わない)女の子に「とりあえずお札ここに置いて、700円とって、レシートは後でいいから。お渡しして。」と丁寧に教えている。真夏も過ぎ去り、涼しくなったとはいえまだ暑い外に比べれば、ガンガンにきいたエアコンで冷えたコンビニの店内でも青年は汗をかきそうなほど焦っている。自分ならきっと汗だくだろう。この瞬間、明らかにイライラするお客さんがいるかもしれない。急いでいて店員を代えてくれと言う人もいるかもしれない。あろうことか怒鳴り散らす人だって。自分が和風ファミレスでバイトをした時、海鮮丼を別のテーブルに持って行ってしまって、本来持っていくべきだったお客さんにめちゃくちゃ怒られたことがある。スーパーの品出しをしているとき、コンデンスミルクの場所がわからなくて右往左往していて呆れてもういいと言われたこともある。まあそれは自分が馬鹿でダメだったからだけど、レジに立つ青年をあれはいつかの自分だと思うと自分はとてもそんな人を怒ることができない。たったの数十秒。しっかりとお釣りをもらって、その次にレシートを受け取る。正しくないことに対して怒るのは当然かもしれない。でも自分のものさしで勝手に決めた基準に達していないからって無闇に誰かに怒りをぶつけるのってめちゃくちゃ意味のないことだと思いませんか。

サウナに行っても毎回気持ち良くととのえるわけではない。ここ2週間はあまり上手くととのえない。きっと何かのバランスがちょうど良く合わさったときに最高の瞬間が訪れるのだ。サウナの中では世界柔道が流れていて女子の決勝戦で湧きに湧いていた。柔道なんて普段は気にして見ない自分もここぞとばかりに、おぉ!とかあぁ〜とか声が出てしまう。隣にいる真っ黒なおじさんもたぶん一緒。寝技をかけられそうになる選手を見ては抜けろ!抜けろ!とだけ言ってしばらくして暑さに耐えきれないのかサウナを出て行く。黒おっさんも隣にいる自分を見て、いつかの自分だと思っているだろうか。いや思ってないだろうな。おっさんムキムキだったし。