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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2015年マイべストムービー20 [1~10]

10. 6才のボクが、大人になるまで。

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これに関しては時間も経ってめちゃくちゃ2014年感が強いですが、やっぱり見たのは今年だし…ってことで。12年の成長をただ映しているだけみたいな意見もちらほら見るけど、いやいやそれってものすごい奇跡でしょう。確かに当たり前は当たり前なのかもしれないけど、どこで途切れるか誰にもわからない道のりを映画として残すなんてそれだけで感慨が深くなる。しかもこれ、6才から18才までの12年間っていうのがもうなんとも絶妙。小さな"男の子"が成長して一人の"男"になるという視覚的な成長が見られるということももちろんの事、この期間って人生において最も何か選択を迫られる期間なのだと思う。何気ない選択や、重大な選択、その選択の結果こそが成長だと思うわけです。それに加えて、この映画を見た人誰もが意識する"時間"。当たり前のことながら、時間は誰しも平等に経過するものであって、しかもそれは不可逆であるということ。あの時した選択が時間を経て今の自分となる。そんな道のりを振り返った時に人は誰かや何かを"懐かしむ"のではないだろうか。劇中のイーサン・ホークの台詞を引用するとしたら「この話の要点?そんなんもん知るか。」ということになるのです。

 

9. インサイド・ヘッド

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いやあ、これはもう完璧でしょう。"子供向け"とかもうそういう肩書きは本当にいらない。というよりむしろ酸いも甘いも知った大人こそ楽しめると思う。五つの感情の擬人化がメインなのだけど、それよりもすごいと思ったのが感情と記憶による"人格形成"を視覚化するという点。先ほどの「6才のボクが、大人になるまで。」でも言及した人生の選択において、それを人間の内部から見るとこうなっているのか…もしくはこうなっていたのかもというところで自分のこれまでも振り返りたくなる。あえて詳しくは語らないですが「ビンボン」というあるキャラクターについて。終盤のある展開でもう目ん玉が出るんじゃないかってくらい涙した場面があるのだけど、それは単純に物語として泣けるっていうのももちろんあるけど、きっと自分の中にもビンボンっていたよなって思わされたからだと思う。そして"カナシミ"が必要だということを"ヨロコビ"が知るポイントでも涙腺決壊。隙が無さすぎる。

 

8. はじまりのうた

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初めて見た時に、思わず画面の前でガッツポーズしてしまった。というのは、自分がなぜ音楽に心動かされるのか、という答えがこの映画に詰まっていたからである。その一つ一つについて言及していたらキリがないのでポイントのみを列挙する。味気ない"独り"の曲がアレンジによって輝き出す瞬間、胸にためた言葉にならない想いが音になる瞬間、そして自分の中から生まれた音楽が多くの他者のものになる瞬間、そんな瞬間に僕は音楽に心動かされ、救われ、不毛になり得る人生のようなものに価値を見出すのだ。すなわちガッツポーズね。ディテールとして、偶発的なハプニンングさえ音楽にしてしまうフィールドレコーディングや集まるサポートメンバーの背景も素晴らしい。現実に立ち返った時に、分岐ケーブル使ってイヤフォンを共有する相手がいないことに気づいてとにかく絶望した。

 

7. アメリカンスナイパー

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予告の時点で、あぁこれは絶対やばい…っていうのはわかっていたのだけど、あの予告の緊張感が全編を通して張り詰めていた。「世界にひとつのプレイブック」のときもそうだったけどブラッドリー・クーパーのある種イッてる目は本当にすごい。後はインダストリアルっぽい劇伴も緊張感を煽る要素としてすこく効いていて、しかもそれが喜んだっていいようなシーンでズーンとノイズのように鳴る。対して、エンドロール。これはもう見て確かめるべき。2015年に公開されるべき映画だったと改めて思わされる。

6. スターウォーズ/フォースの覚醒

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映画自体の内容もさることながら、チケットを取り、公開日に映画館に観に行くという映画体験も含めて個人的にこの順位まであげてしまった。内容については、先日別の記事にまとめたのでそちらに。何度も言うようですが、とにかく主役のレイを演じるデイリー・リドリーがめちゃくちゃ良い。序盤のレイが独りで生活しているシーンなんて台詞なしの彼女の表情と動きだけで何だか泣けるのだから。次回作、見事な世代交代をしていよいよ彼女たちの物語が始まっていくわけで目が離せない。

 

5. きみはいい子

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呉美保監督作は前作「そこのみにて光輝く」を今年見てガツンとやられたところに、ちょうど新作が公開されたのでベストタイミングでした。これぞ、今回ベストのランク付けをするにあたって設けた「見終わった後に如何にその映画のことを考えたか」という点で一番ハマったと思う。映画自体のテーマや着地のさせ方について、ともすれば安易と捉えられてもおかしくないくらいほど難しいものだけど、押し付けがましくなく、不確定だけどそれでもこうやって生きていくしかないという答えを提示してくれる。時代性というか、悪い面だけを見れば教師って救われない仕事かもしれないって思うけど、そんな教師側をも掬い上げる答えになっているのではないかと思う。新任の先生とかにはマストで見てもらうべきだと思う。この瞬間にも"午後5時の時計盤"や"揚げパン"というキーワードはもうそれを思う出しただけで、じんわり涙が出てしまう。

 

4. マッドマックス 怒りのデスロード

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はい。きました。瞬間最大風速的な興奮度で言えば今年ぶっちぎりでベストです。これが公開された時代に生きてて幸せ。一本道を行って帰ってくるというこんなにも洗練されたプロットの中でこんなにも人間の変化や希望を描ききるとは。しかもアクションで。個人的に思うこととして、ここに並んでいる映画全てがこの「マッドマックス 怒りのデスロード」の言わんとしていることに帰結すると思っています。今作の中でいうと往復の"帰り"の部分。「ここで生きていくということを他の誰でもなく自らで選び取る」ということでしょう。不確定な理想郷を目指し外に出る、それもまた一つの道かもしれないけれど、与えられたこの場所で生きることを選ぶのだって大切な選択だし、仕事とかなんでもさ無意識に誰もがしていることだと思うんだよね。それをこんなにも讃えてくれる映画を内容がないなんて頼むから言わないでほしい。V8!V8!

 

3. 恋人たち

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今作に関しても、まだ消化できていないところがありますが「マッドマックス 怒りのデスロード」の中でも述べた通り、この生きるには辛すぎる世の中をそれでも選んでいく、そして希望を見出していくような映画だったと思う。そしてそんな希望というのは「うちにテレビ見においでよ」とか「一緒にお弁当食べようよ」とか一つの飴玉とかそんな何気ないものなのかもしれない。コミュニケーションという観点に関しては稚拙ながら先日の記事にまとめたのでそちらに。

 

2. 海街diary

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キャストの豪華さや公開規模からしても多くの人が見るということを考えれたら、何も起きない、ともすれば退屈と捉える人がいてもおかしくないとも思うけれど、物言わない演出がこれでもかと詰め込まれた深みがあるだろうか。家や食べ物や仕草やその人自身に宿る不在の存在。キャストに関して言うと、普通ならこんな美人4姉妹いねーよって冷めてもおかしくないのに、この日本のどこかに(というか鎌倉なのだけど)この人たちはいるんだと思わせられる説得力。これぞ是枝監督の人物演出の妙なのでは。どうか今も鎌倉の海辺をあの四姉妹が歩いていることを願う。 

 

1. フォックスキャッチャー

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はい。2015年個人的なベストはこれでした。見た日から頭のどこかにマークやデュポンさんがいて、ああマークは元気にしてるかなとか(まあ実在の人物だからいるのだけど)、あの時あいつってどういう気持ちだったんだろうとかそんなことをふと考える時がとても多かった。今でもそうもしれない。でも考えてみれば、マークは外国のオリンピックレスリング選手でデュポンさんは御曹司で犯罪者ですよ?普通に生きていたら自分と共感できる部分なんてありそうもないものだけど、なんだろうなあ。マークの気持ちも、デュポンさんの気持ちもわかるんだよなあ。だって自分だって圧倒的な正しさに反発したり、素直になれない時があるし、わかっていても正しくない方を選んでしまう時があるんだもの。だからこそ最後のマークの、それでもあの場所を選んだ背中からは決して安くない何かを受け取った気がする。

 

はい、ということでまとめです。ベスト20からは漏れてしまったけど大好きな映画が他にも沢山ありました。そこにもどこかで触れられたら。今までって単に好きな役者さんが出てるからとか、そんな風にしか見る映画を決めてなかったけれど、監督の過去作を追って作品性を感じたりとか、それこそリアルタイムで上映作をみて時代性を感じるとか、いろんな見方を知れました。想像すると、今でも僕の中の世界のどこかにはマークや幸、佳乃、千佳、すずの四姉妹や、アツシや瞳子や四ノ宮、マックスやフュリオサ、岡野先生や神田さんは生きている。それだけでいいかも。