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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2016年マイベストムービー30 [11~20]

20. シン・ゴジラ

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これもあらすじはいいよね?????いいね???

自分はゴジラ作品も追っていないし、エヴァも見ていないです。それでもなんの気負いもなく楽しめた。そりゃもう面白かったです。これってテンポの映画というか。台詞が早口だとか、よくわからない字幕がいっぱいでるとか、それをアリにしてるのってこのテンポ感だと思う。でもそれをゴジラでやっちゃうんだっていうのがすごいとこなのだけど。しかも一方のゴジラがとことん怖い。強い。うわあ。死にたくねえって本気で思う。んー。とにかくそこには映画の映画たる意味が溢れていたし、今の日本にゴジラが現れる意味があったということでしょう。人間ってほんとにクソでバカかもしれないけどさ、最後にはそれでも人間なめんな!って映画が好きだ。誤解を恐れず言うなら、やっぱり娯楽映画として肩に力を入れずに見に行って"も"いい映画だと思った。

 

 

 

19. It Follows

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19歳のジェイはある男と一夜をともにするが、その後男が豹変。縛り付けられたジェイは「それ」に殺される前に誰かにうつせ、と命令される。ゆっくりと歩いてくる「それ」はうつされたものにだけにだけ見える。「それ」はゆっくりと歩いて近づいてくる。「それ」は人にうつすことができる。「それ」はうつした相手が死んだら自分に戻ってくる。「それ」は他の人には見えない。そして、「それ」に捕まったら必ず死が待っている。果たしてジェイは、いつ、どこで現れるか分からない「それ」の恐怖から逃げきることができるのか。

これは猛烈に好きな映画だ。まず怖い。「なにか」が追ってくるだけ、という新鮮な設定で、かつ真っ当に怖いホラー映画としても抜群なのに、この映画は紛れもない青春映画だし、言ってしまえばボーイミーツガールでもあると思う。絶対に逃げられない抗えない「なにか」が追ってくるとして、後ろを振り返って逃げ続けるしかないのか。いや、違う。人間なめんな!人生なめんな!つーか生をなめんな!的なラストが焼き付いて離れない。「なにか」に何をいれるかによって楽しみ方はそれぞれだけど、こんな角度からの人生賛歌見たことない。

 

 

 

18. 永い言い訳

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人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。保育園に通う灯と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。子どもを持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが・・・。

鏡に映る合わない視線、髪の毛、一人で漕ぐスワンボート、お米を研ぐこと、洗濯物のたたみ方、自転車、バス停、カレーライス、鳩時計。連ねられるショットの美しさだけで涙が溢れる。ただの断片が振動して過去や不在を語り始めるのはやっぱり映画にしか出来ないことだ。それが繋がった、海辺での「こうだったかもしれない景色」はもしかしたら今年一美しかったかもしれない。そう、やっぱりこの作品は言葉で語られないものの美しさが肝だと思うのです。そうすると、あの最後の電車内で交わされる会話はもう少しピントをずらしてもよかったのでは。それか「人生は他者だ。」という言葉に留めておくか。にしても子役の二人、特に灯ちゃんがほんと最高。

 

 

 

17. ブリッジ・オブ・スパイ

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アメリカとソ連が一触即発の冷戦時代にあった1950年〜60年代。ジェームズ・ドノバンは、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界の平和を左右する重大な任務を委ねられる。それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった。

粋な映画だ。実話ともなると、美談として押し付けがましくなってもおかしくない話をこんなにタイトに、かつ豊かに見せられるとは。特に唸ったのは視点の演出。懐疑的なシーンではほとんど鏡を使って別角度から人物を映す描写があった気がする。それがラストでは、自分の中に確固たる「正しいこと」を最後まで持ち続けた2人を真正面から映すカットに変わる。それがとても清々しくて、ああこの映画は間違いないなと思った。追い打ちをかけるように、その後でもう一度鏡を使った場面があったのだけど、前半での鏡の使い方との違いにまたじんわりとやられた。

 

 

 

16. マジカル・ガール

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白血病で余命わずかな少女アリシアは、日本のアニメ「魔法少女ユキコ」の大ファン。彼女の願いはコスチュームを着て踊ること。娘の願いをかなえるため、失業中の父ルイスは、高額なコスチュームを手に入れることを決意する。この彼の行動が、心に闇を抱える女性バルバラと、訳ありの元教師ダミアンを巻き込んでいく。出会うはずのなかった彼らの運命は予想もしない悲劇的な結末へ・・

あえて見せない、語らないところがとても多くて想像力をフル回転させながら見るととても楽しい。特に後から見てわかるということもないから自分の中だけの想像が膨らむし、人と話すのも楽しい。あこってどんな部屋だったんだろうねー。みたいな。一見意味のないシーンが終盤になってどすんと効いてくるところがとても多いのですが、特に序盤は目を凝らして見ることをおすすめします。ああ!あれが!うわああああああ!となること間違いなし。正直、なんでこんな映画つくるんだろうって思うような話で、エンドロールが終わった途端ため息が出た。「登場人物の誰かが映画の中で晒される」という問題に関しては、難しいところだけどそれが物語のために動かされているのだとしたら嫌悪感を感じてしまう。(例えば「リップヴァンウィンクルの花嫁」とか)でも、それが因果応報の果てにあるものだとしたら、許せる…とまではいかないけど必然だよなあと思う。この映画は後者だと思った。あとこの映画のすべては「誰かの願いが叶うころ」に詰まっていると思う。みんなの願いは同時には叶わないのですね。

 

 

 

15. スティーブ・ジョブス

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1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMacというジョブズの人生の中で最も波乱に満ちていた時期に行なわれた3つの新作発表会にスポットを当て、人々を魅了した伝説のプレゼンテーションの舞台裏を通し、信念を貫き通そうとする姿や、卓越したビジネスセンスを浮かび上がらせていく。

物凄く情報量が多い、のに極めてミニマルミュージック的な不思議な映画だった。正直、見るのを2回くらい途中で断念してしまった。集中力はだいじ。繰り返しの中に見る、彼の心を凝り固めてしまったもの、そして彼の心を溶かしたもの、最後まで彼の心を燃やし続けたものとは。カットバックがとにかく秀逸。特にラストのジョブズを見つめるウォズの眼差しと共に挿しこまれるあれはもう。ね。あと、あらすじほどジョブスを凄い人に描こうとはしてないし、どちらかというと幻滅してしまうところもあるというか。

 

 

 

14. 裸足の季節

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13歳のラーレは5人姉妹の末っ子。10年前に両親を事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父たちとともに暮らしている。学校生活を謳歌していた姉妹たちはある日突然、家に閉じ込められてしまう。古い慣習と封建的な思想のもと、電話を隠され、扉には鍵がかけられ、自由を奪われた「カゴの鳥」となった彼女たちは、ひとりひとり見知らぬ男のもとへと嫁がされる。ラーレは自由を取り戻すべく、ある計画を立てる…。

もちろん、感情移入するのは5人姉妹であり、ラーレである。でもちょっと待って。交通事故で両親を失ったあの姉妹を祖母や叔父はどんな気持ちで育てていたんだろう。疑いもなくその慣習で生きてきた彼らは、同じようにその中で彼女たちに生きてほしいと、幸せになってほしいと純粋に思っていたのではないだろうか。いや、だってこの人は良い人悪い人って白黒つけるのってそれこそ窮屈じゃん。映画を見てたってさ。絶対グレーな部分ってあって、そこにこそ想像力を働かせるべきなんじゃないかなぁ。もちろん何かを傷つけたり、まして命を奪うことは悪いことなのは間違いないし、その中で彼女たちが自分の生き方を選ぶのはとても美しい。でも同じように、あの陰惨な場所に差す暖かい光もまた美しい。だからこれって何かの「否定」の映画じゃなくて、あくまで「選択」の話なのだと思う。

 

 

 

13. ブルックリン

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大人しく目立たない性格の少女エイリシュは、妹の将来を案じた姉の勧めで、アイルランドの小さな町からニューヨークへとやってくる。それまでとはあまりに異なる大都会での生活に戸惑うエイリシュは、しかし、イタリア系移民の青年トミーとの恋をきっかけに大きく変わっていく。洗練されたニューヨーカーとして生き生きと日々を過ごすエイリシュだったが、そんな彼女のもとに故郷からある悲報がもたらされる。

観ている最中も、観終わった後もずっと頭の中に、『人は選択肢に恋をする』という言葉が浮かんでいた。ポエム感全開で恥ずかしいのだけど。自分の話で言うと、僕は大学進学時に上京しなかったことが、今でも心の何処かで何かもやっとしたものになっている。故郷に残るか、東京に行くかという二つの選択肢のうち、僕は残ることを選んだのです。まあそこまで重く考えていなかったかもしれないけど。今でもあのときに上京してれば、と考えることがある。でもその反面で上京していたら、それを後悔していたかもしれないとも思う。つまるところ、選ばれなかった選択肢というのは不思議と輝いて見えるものなんじゃないだろうか。そんなことも踏まえた上で自分の人生を自分で"選び取る"ということそのものが美しい。ポスターにも使われていたあのカットのエイリシュのまっすぐな表情よ。あれだけで感涙でしょう。お話的に言えば、俯瞰として見ると故郷に残るなんてありえない!ってなるけど、でもさ、、あのエイリシュの立場に自分が立ったらって考えるとそんな安易な考えは出来ないよね。エンドロールの中そんなことを考えていたら発狂しそうになった。他にもいろいろなバックグラウンドも描こうと思えばいくらでも描けたのにそこを排除したのは、人物描写が足りないというより、あえて最低限にしたんじゃないだろうか。その方が普遍的に収まるしそれこそ正解だと思った。

 

 

 

12. ルーム

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7年前から施錠された部屋に監禁されているジョイと、彼女がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子ジャック。部屋しか知らない息子に外の世界を教えるため、自らの奪われた人生を取り戻すため、ジョイは全てをかけて脱出するが……。

とても真摯な映画だ。なんだか上から目線だけどすごく感心した。特にラスト。当たり前かもしれないけど、こういう題材を扱う上で丁寧にやらなきゃいけないことがごく自然に出来ていた。天窓から見える狭い空と、あの状況で初めて見ることになる広い空。なんだろう、このシーンに関しては感動とか、そんな範疇の言葉じゃ収まりきらなかった。

 

 

 

11. 10クローバーフィールド・レーン

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目を覚ましたら、シェルターの中にいることに気付いたミシェル。その日から「きみを救うためにここへ連れてきた」と話すハワード、自らシェルターに逃げてきたエメットの3人のシェルターでの共同生活が始まる。ハワードは、本当に信用できるのか?それとも別の目的がある悪人なのか?疑心暗鬼の中、共同生活が続いていく――。 

こういう映画を地方では映画館で見れないのが本当に辛い。「これはこうあるべき」というあくまで勝手な、無意識な意識が当たり前のようにある。例えば、パニック映画は原因を明確に語るべきとか、地球外生物は根拠を持って倒すべきとか。はたまた、お皿はテーブルクロスの上に置かれるべきとか、夕食は会話をせずに食べるべきとか、女性は外に行かずに家の中にいるべきとか。この映画はそんな「こうあるべき」にとことん抗い続ける。んなもん誰が決めたんだよ、と言わんばかりに。それがあまりに突飛すぎるというのも確かに否めない!いやでもそれにしたってこういう映画が存在する意味は有る。あえてネタバレを回避して更に付け加えるとしたら、これって魔法に頼らないシンデレラだ。自らの知識と経験と機転(これが一番大事)で自らの道を選び、歩く。ん?ラストが気入らないって?いやいや自分で拓いた道を照らす火って何より強いじゃん!!!!ラストのラストのカットまでとにかくカッコいい。最高。