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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

それもまた行間 - 『カルテット/第2話』

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いやね、ブイヤベースと餃子の話から唐突に始まるドラマがありますかね?しかもそれがめちゃくちゃ面白いときたからもうね。こんなに瑞々しい会話たちが毎週見れるなんて嬉しすぎる。きっと餃子の話も「秘密を包み隠した」4人が話すから面白いのだろうな。のっけからこういうところが本当に見ていて楽しい。目が活きる。

 

さーて。今週は家森さんの口から「行間案件」なるものが飛び出しました。

「好きな人には好きって言わずに会いたいっていうでしょ?」

「会いたい人には会いたいって言わずにご飯行きません?っていうでしょ?」

「言葉と、気持ちは、違うの」 

うんうん。まさにこのドラマがやろうとしていることだと思う。人が会話をする、その真意。例えば第1話での「唐揚げにレモンをかけるか」なんてまさにそう。言葉の表層だけでなくてその先、そしてその隙間にこそ人の気持ちが宿るはず。それならば今回はそれに従って振り返って見たい。

 

実は今回、各所に「円」が点在していた。物語の象徴として通底する「ドーナツ」はもちろんのこと。例えば冒頭、スーパーの駐車場に置き去りにされた石を拾ったことをきっかけに唐突に始まる「カーリング」。あれはドーナツの穴を埋めるが如く「円」の中に石を入れていく4人1組のスポーツな訳です。石を投げる、別の何かを弾き穴を埋める。何か別のものを弾き出して自分たちを円の中に入れるという動作は、まさしく第1話で彼らのとった行動そのものじゃないだろうか。きっとそんな意味がその隙間にはあるはず。もしかしたらただ軽井沢カーリングの施設があったから…なんてこともあるかもしれないが、そんなことを言うのは野暮だ。物語の冒頭にこのシーンを挿し込むのにはきっと意味があるはず。しかも、第1話でのワゴンにペイントを施すシーンよろしく4人で活動をするシーンではなぜか3人は転んでしまうのですね。(勿論演奏シーン以外で)

 

例えば別府さんから突然の告白をされた巻真紀が話す「花火」はどうでしょう。これも「円」じゃないですか?しかもそこには「ぬか喜び」という意味まで付随してくる。巻真紀は言う。

「私、結婚するまで花火って見たことなかったんです。」

「火じゃないですか。火を空から撒き散らすんですよ。絶対火事になると思って怖かったんです。」

 

「花火ってこんな簡単に消えるんだ」

「綺麗だなって思った時にはもう消えてるんだ」

台詞だけ聞くと巻真紀は花火が嫌いなのか、とも思えるけどきっと違う。失踪した夫と見た花火は彼女にとってただの火でも、消えてしまうものでもなくて、「誰かと手を繋いで見たもの」になっているんじゃないだろうか。花火は散って消えていくことに意味があるし、花火が消えてしまってもそれを「美しい」と思った気持ちや記憶は消えない。それで言うと、別府さんは若干悍ましさすら覚える巻真紀への好意は消えてしまったわけだけど、最後にそれはどうなりましたか?ただ消えてしまっただけでしたか?否。「私、宇宙人見ました。」というなんともチャーミングな台詞によって、消えてしまったけど別府さんと巻真紀の間に確かに在ったその時の気持ちは残っているはず。

 

一方で別府さんと九條さんの関係もまた消えていくわけですが、それもまたただの別れではなく「寒い朝にベランダでサッポロ一番食べたら美味しかった」という到達点を迎える。あのシーンの色味といい、衣装といい、菊池亜希子の声といい、殺しにかかってるのかと思いました。喫茶店の比喩も最高。しかも、そのあとの結婚式でのアヴェ・マリアからのwhite loveはもう失神するかと思った。その後の紅でしっかり目を覚ましました。(九條さんの結婚相手がよくする話はタイヤ。これもまた円。しかもドーナツに似てる。)

 

今回は別府さんにスポットを当てた回だったけど、その一方ですずめちゃんの抱く想いをコンビニの前で食べるアイスで描いて見せたりしたところはもう流石ですよね。このシーンも失神するかと思った。今回やったような行間を読むことを行間を使って描く、ってちょっとすごい。来週はすずめちゃんフィーチャーの回らしいので震えて待つ。