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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2022.11.24(元気か元気じゃないか)

昨日は祝日、勤労感謝の日で勤労に感謝しながら北沢タウンホールに行った。『劇場版ダウ90000ドキュメンタリー 耳をかして』を見た。これは放送作家の白武ときおさんが手がける『みんなのかが屋トークライブ 加賀の休養についてすべて話します』『劇場版まーごめドキュメンタリー まーごめ180キロ』に続くドキュメンタリーシリーズ。8人組のユニット"ダウ90000"の主宰である蓮見翔以外の7人に着目したドキュメンタリーである。あなたがダウ90000を好きならば、何も言わずにすぐに以下のリンクから配信アーカイブを見ることを薦めたい。

前身ユニットを2020年9月に旗揚げし、2021年9月に現在の8人体制になり、そこから演劇公演を3回開催し、来年には本多劇場での公演が決まっている。その他、ABCお笑いグランプリへ決勝進出やドラマへの出演等、その活躍ぶりは言うまでもない。

しかし、このドキュメンタリーを見るとトントン拍子に進んでいるかのように見える彼等彼女等個人の想いのグラデーションが見え隠れする。奇しくも新型コロナウイルスの蔓延と同時期に生まれて、それがほとんど当たり前みたいになったこの2年間、ここに至るまでの記録としてとても意味のあるドキュメンタリーだし、何より人間っておもしろ!ってちゃんと思える。それがドキュメンタリーの何よりの価値だと思う。当たり前のことだけど、底抜けに明るくて、わいわいしているように思える集団でも、個々にはそれぞれに何か欠けた過去や渇望がある。いや、なんかそれっぽいことを言おうとしてる感じがしてきたからやめます。ダウ90000、まじで面白いっすよね。おれが特に好きなコントはこれです。

 

ダウ90000の面白さは言語化できそうでできない。でも誰かに「これ面白いから見て!」って共有したくなる気持ちを特別に感じる。あーそれそれ。って理解の出来るディテールの"あるある"と、初めて耳にしたけどそういう気持ちって多分自分の中にもある。みたいな抽象度の高い"あるある"の両方が共存しているからなのかなぁと最近は感じている。そういうものは、何とはなしに誰かに話したくなる。そういうものが自分にとって凄く大事だと思う。ドキュメンタリーの最後に超最高なエンドロールが流れて、それを見た後の蓮見さんの表情のこと。口にしたこと。それを見たり聞いたりしたその日のこと、多分自分はずっと忘れない気がする。蓮見さんが「8人の仲が悪くなったら辞めてもいいと思ってるし、7人のことが好きだから当て書き出来てると思ってる。」と言っていたのを聞いて思い返すと『ずっと正月』は上原さんの人間性を、『いちおう捨てるけどとっておく』は道上さんの人間性を表した作品にも思えてくる。

 

会社では時期もあってか、年末いっぱいで退社してしまう人の内示がぽつぽつ出ている。その中に近い部署で働いている人の名前があった。今年の初めに中途入社したその人とは1ヶ月前くらいに初めてまともに仕事以外の話をした。その人は朝井リョウ加藤千恵オールナイトニッポンが好きで、学生時代には飯田橋ギンレイホールに映画を見に通っていた。オールナイトでアート映画を観ていたけど訳が分からなくて、しょっちゅう寝てたんだよね。って話を聞いたとき、なんて良い話なんだと思った。もっと色々話しておけばよかったと思った。

最近あまり連絡を取らなくなってしまった(と思っていた)友達に、聞いてみたいことがあって何気なく連絡してみた。一通りその話題が終わった後に「別にあえて言うことじゃないんだけど」という前置きと一緒に最近のことを聞いた。自分が空白だと思っていた時間にも、その人には色々なことが起きているし、色々なことを考えていたんだということを想って言葉に詰まった。後で、元気なときに見て。と言って、ダウ90000の『いちおう捨てるけどとっておく』の配信を送った。なんか違うなと思って、元気じゃないときでもいいから見て。と付け足した。

2022.11.20(人に会うとコーラが飲みたくなる)

 

昨夜、深夜まで友達と話していた。寝落ちしそうになったけどちゃんと受話器を下げるボタンを押した。電話機というものがなくなったら、あの記号だけが生き続けるんだろうか。

朝起きて友達とPodcastを録った。M-1の話をしてる時の自分はキモすぎやしねぇか?(©️カゲヤマ )と思ってしまう。相応にぶつけられる人にしかぶつけられない想い。安易に押し付けてしまわないように気をつけようと思った。

ごはんとは呼び難いごはんを家で食べてから文学フリマに向かった。横浜駅から京急線で近くまで行ってモノレールに乗り換えるつもりが、気付いたら寝てしまっていて羽田空港にいた。キャリーケースを引いた人たちに囲まれながら空港ロビーをうろうろしてモノレールに乗り換えた。

一年前にも文学フリマに行くためにモノレールに乗ったことを思い出す。湾曲したレールをしがみつきながら動く乗り物は奇妙だと思う。Twitterを見たら友達も会場に向かっていそうだったので連絡して待ち合わせた。降ってるか降っていないか微妙な雨が降っていた。それぞれに分かれて、行きたいところで見たいものを見て買いたいものを買った。この空間が好きだと、去年初めて来た時に感じたことを思い出した。こんなにも沢山書きたいものを書いて、それを形にして、人の手から手へ受け渡す瞬間がある。その空間を歩きながら眺めてるだけで嬉しくて、ついつい足を止めてしまう。いくつか買おうと思ってたものはメモしていたけど結局ぐるぐると練り歩いた。買うこと以外にも、自分の本を手に取ってくれていた方が出店していたので、ちゃんと言葉で感謝を伝えたかったのも来た理由のひとつだった。悪い自意識が働いて、自分から名乗り出るのなんて傲慢すぎやしないかと思ってしまい、出来るだけ人の少なそうなタイミングを伺って…とか考えがているうちに、時間とその場をぐるぐるする歩みだけが増えていった。覚悟を決めて、でもそんな覚悟を決めたことを悟られないような顔で、声をかけた。そんな覚悟がどうでもよく感じるくらい声をかけて良かったと思った。

 

以下、今年買った本です。

原航平さん、上河内舜介さんの『VACANCES』

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バカンスをテーマにインタビュー、エッセイ、川柳、怪談と、内容はもちろんのこと様々な文章のフォーマットがひとつのZINEに集まっているのが好き。クラゲのキーホルダーにはポエムが記されていて家に帰ってから読んで笑った。

 

ショージサキさんの短歌ZINE『ガールイーツガール』と28人の歌人によるエッセイ『いつか行きたい場所2022』

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行きたい場所をテーマにそれぞれが1ページずつそれについて綴るというのに惹かれて買った。横に並んでいた短歌も少し中身を覗かせていただいて開いた1ページ目からめちゃめちゃ良かったので一緒に買った。

 

キシアイリさんの詩集『下手くそなビブラートが愛おしい』と日記『ぬけがらの月』

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装丁のデザインが綺麗なのと、本の説明文を吊り下げの紙でブースに置かれていたのに目を引かれて、中身をのぞいて買った。

 

『京都ジャンクション第16作品集』

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高瀬さんの芥川賞受賞に至るまでの日記が読みたくて買った。多分そうだろうなと思ったけど、ブースで対応していただいたのが高瀬さんご本人で、今しみじみとそんなことって起こり得るんだ…と感じている。自分が書店で買って読んだ本を書いた人を目の前にするのはとても不思議な感覚になる。人が書いているんだということを実感させられる。

 

手条萌さんのお笑い評論『コントを考える』と『教養としてのお笑い評論、あるいは30年史』

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お笑いについての評論が読みたかった。新刊のコントを考えるを買うつもりで行ったけど、既刊3冊がまとめて収録された後者も併せて買った。お笑いについてきちんと批評されたものはとても大事だと思う。お笑いは言語化、分析されることが変にタブーに思われて閉じたカルチャーになりやすいけれど、お笑いこそ時代と共にもっと批評の対象になるべき。

 

好きな食べ物はグミ。のエッセイ集Vol.4

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歩いていて、特集テーマの「これからも、ずっと好きでいたいもの。」が目について買った。買った時に、「どこで知られたんですか?」と聞かれて「Twitterとかで見かけた気がします」という意味のない嘘をついてしまった。シソンヌの単独ライブのことについて書かれたエッセイが収録されていて読むのが楽しみ。

 

ちんくま読書会の読書会記録

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19冊の課題本について、それぞれ一人が見開き1ページを担当して感想を記した記録。課題本はどれも読んだことがなかったけど、担当される方によって手書きだったり、イラストがついていたり、切り口がまったく違うアプローチをしているのが面白くて読んでみたくなった。

 

ひと通り会場を回った後、友達と合流して駅に向かった。雨はその存在感を少し強めていて、歩いている間に肩はしっかり濡れた。ホームで別れたつもりが友達は向かう方向を間違えていて、同じ方向へ向かうホームでもう一度会った。買った本のことを話したりした。天空橋で乗り換えだったのでそこで別れた。天空橋はかっこいい名前の駅。天空感は微塵もない。傘をささなきゃいけないくらい、もう雨はちゃんと雨になっていた。京急線の電車を待っていたら電車が来て、逆方向のホームで待っていたことに気付いた。友達と同じことをしている。慌てて線路を挟んだ向こうに走った。最寄駅に着いてコーラを買って飲んだ。普段あんまり飲まないのに人と会ったあとにはなぜかコーラが飲みたくなる。

家に帰って買った本を少し読んだりしていたらうとうとしてしまった。ここ数日で会った会社の同期や友達、配信で見たトークイベントに出ていた映画ジャーナリストの人が夢に出てきた。あんまりいい夢じゃなかった。起きてお風呂に入った。雨の音が窓の外からしっかりと聞こえる。あしたも会社に行くの嫌だなあと思いながら今日中に今日のことを書きたいと思って今に至るけど、時計の針は容赦なくぐるぐるまわって日付は変わってしまった。