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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2021.10.20(空白みた)

昨夜は熱めのお風呂に入った。クナイプのバスソルト入れた。あの青いめっちゃいい匂いのやつ。ぐっすり寝れた気がする。それでも朝起きるのはつらかった。今日参加した打ち合わせは全部話が迷宮に入っていて議事録とりながら辛くなった。早めに帰れそうだったのと、今週を逃したらもう見れなそうだったのでレイトショーの吉田恵輔『空白』のチケットを取った。割と時間があったので横浜駅近くのカプセルプラスのサウナに行った。広くない分セルフロウリュで上がる蒸気が充満してしっかり温度が上がってた。水風呂もそんなに温度が低くないけれど、この季節なら十分な温度でちゃんと管理されてるんだなあとしみじみ思った。大学生男子3人がサウナ内で喋っていて、別に喋っているのは良いんだけどおれらの会話面白いだろ感がとても出ていてキツかった。あの大学生のとき特有の感じ、あれなんなんだろ。8時のアウフグースの時間にジンジャーの香りのアロマ水が石にかかって鼻にツンとする匂いが充満したときに大学生の一人が「叶姉妹の匂いじゃん!」って4回くらい言ったのがずっと耳の穴にこびりついた。聞こえてるし面白くないわ、と胸の中でぐるぐるした。嫌な大人だな、と自分のことが嫌になって早めに出た。サウナ内できついホモソーシャル全開の会話が耳に入ってくるのって本当によくあって、まぁ別に何を話そうが自由ではあるけれど、それによっておれのととのいは奪われてるんだってことは強く言いたい。あとジンジャーのアロマも実際そんな良くない。もやもやしながら映画館に行った。そんで『空白』ですよ。ちょっと久しぶりにどすっと胸を殴打された感覚がまだ言語化できないまま残ってる。見てる途中もあまりにキツくて辛くて逃げ出したくなった。大学生の言葉がこびりついた耳に「あの、お弁当美味しかったです」という、文字にしたらなんてことのない言葉がある場面で耳に入ってきて、思わず息が漏れた。やっぱり自分は映画の中で、理不尽に誰かの命が奪われてしまうことや誰かが一方的に辱められてしまうことについては映画の中であっても本当にそうするべきだったのかを考えてしまうし、この作品の中にもそれを感じる部分もあった。でもこの映画は順接でそれを結んでない気がした。誰かが死んだ、だから失った人はこうなった。悲しい事件が起こった。だからこの人は人生を見つめ直した。それでは結果ありきで誰かの命が奪われている気がしてならない。それが何より辛い。でも『空白』はその順接の外側から、"それでも"これがある。というところに向かっていく映画だと思う。順接で結びきれない事象の中では正論や真実はまったく意味を成さない。それはここ数年で自分も嫌というほど思い知った。自分がそれを受ける側にも与える側にもなるということも今でも感じる。この映画の中でも同じように、善意も悪意もあらゆるところで循環している。「お弁当、美味しかったです」という自分が吐いた言葉に絶望する時もあれば同じ言葉に救われることもあるということ。とりあえず今はちりとりの中に掃かれたカレーとそのときに彼女が流した涙のことを考えたい。ああ、もっといろんなこと話したいな。もう少しで終わってしまうのでいろんな人に見てほしいな。映画館を出て観覧車が光る駅から電車に乗って帰ってきた。