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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2021.05.08(もう二度と会わない人)

少し前に本屋さんに行った。日比谷シャンテの中にあるHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEが冗談抜きで日本で一番好きな本屋さんだ。整ったレイアウトに見えて書籍の棚に漫画があったり画集があったりして、本のフォーマットや著者は無視してそれとは別の共通性で棚がまとめられているのがとても好き。例えば、はるな檸檬『ダルちゃん』の隣に笹井宏之の詩集『えーえんとくちから』があるのだ。その二冊を並べたくなるのもわかるし最高の並び。

そこにある棚に穂村弘の『短歌ください』シリーズが並んでいて、なんとなく手に取ろうと思った一冊を別のお客さんが取って読んでいた。あぁと思ってそこに立ち尽くすのもなんだから別の棚をぐるーっと回って戻ってきたけれどまだ読んでいてなかなかタイミングが掴めない。もう少し待ったら本を置いたので、気持ち間を開けて手に取った。やっぱ持っておきたいと思い、そのままレジに向かった。

こういうことがあると日々思う。自分が買った穂村弘の本を手に取っていたあの人とは多分もう二度と会うことはない。何か親密になれる可能性があるかもしれない人とは大体もう二度と会うことはない。ただ同じ棚の前にいただけ。ただ同じ映画で隣り合わせただけ。そんな人が多すぎる。

有楽町の交差点で信号を待ちながら、かと言ってそんなことで声かけられても普通に気持ち悪いよな、とか思った。

もう二度と会わない人や会えない人だらけだ。

 

以下連休中の記録。 

 

4/30

朝起きて掃除と洗濯をした。友達が泊まりにくる予定があると捗る。普段なかなか掃除しないところまで掃除しちゃう。どうしても耐えきれずにお昼に池袋のもうやんカレーに行く。ランチタイム開店のタイミングでもめちゃくちゃ人が並んでいた。もうやんカレーはまじで脳にダイレクトに訴えかけてくる美味しさ。お腹がパンパンになったので1時間ちょいくらいかけて田端まで歩く。田端から北浦和スーパー銭湯に行く。このご時世のサウナはやっぱり人数制限がかかっていて常に満員のため、入り口のところに待ちの列が出来ていた。のびのびくつろぎに来てるのにそれって本末転倒じゃん。なんだかなぁ。とか思いつつもやっぱり列に並ぶしかないのが辛い。初夏の風にあたりながら少し眠った。銭湯から出て埼玉の映画館に行った。見逃し続けていたブライアンカーク監督/チャドウィック・ボーズマン主演の『21ブリッジ』と吉田恵輔の『BLUE』をノータイムで2本連続で見た。ぎりぎり日付が変わる直前くらいに部屋に帰ってきた。なんでこんなに一日に予定を詰め込んだのかわからないけど良い連休になりそうな気がした。一日の自分の動きをもしも衛星が追っていたとしたら、こいつは何に急かされてこんなにも県境を跨ぎまくってるんだと不審がられたでしょう。

 

 

5/1

記憶がない。良い連休の定義はわからないけれど記憶がないのは少なくとも良くはなさそう。

 

 

5/2

お昼から会社の同期と北千住でお好み焼きを食べた。なんでかわからないけどお好み焼きになった。多分みんな脳裏に『コントが始まる』3話のたこ焼きが染み付いていたのだと思う。雨が降り出しそうな厚い雲から逃げるように醤油団子とあん団子を公園で食べて喫茶店に入った。ご飯を食べること以外にすることないよなぁみたいな話をした。成城石井に行って何が不当に一番高いかを決めたりしたけどみんなどれも妥当な値段で成城石井は別に間違ってないという結論になった。自分の部屋に一人の同期が泊まりに来たので、Nintendo Switchで「スーパー野田ゲーパーティー」を買ってずーっとしてた。まじで爆笑しながらやってた。気付いたら夜になっていたのでUber Eatsで中華を頼んで食べた。自分のレコーダーに永久保存されている「勇者ああああ」のベスト回を見たりして気付いたら二人とも寝ていた。成城石井カヌレがめちゃくちゃ美味しいことに気付いた。

 

 

5/3

朝起きて同期と「バイオハザード1」をしていた。あまりにセンスがなさすぎて犬に食べられてすぐ死んだ。同期が帰って別の友達と会うために最寄駅に行った。もしかしたら居酒屋開いてるのでは?みたいなよくない期待(別によくなくはない)をしながら覗くもやっぱりどこもシャッターを下ろしていたので自分の家で餃子を作ることにした。何もかもなんとなくで作って茹でた。めちゃくちゃ美味しかった。YOASOBIはなぜ人気なのか?ずっと真夜中でいいのにの素晴らしさ、みたいなことを話しながら久しぶりにお酒を飲んだ。気付いたら寝てた。部屋の中もいつのまにかまた夜になって友達は帰って行った。また一人になった。

 

 

5/4

いつも帰省したら必ず集まる友達とLINE通話をしながら桃鉄をした。3年で飽きて終わった。普通に会話してて気づいたら深夜4時くらいになっていた。笑いすぎて頬が痛くなってることに朝方気付いた。外が薄ら明るくなってるのを見ながら寝た。

 

 

5/5

『大豆田とわ子と三人の元夫』の第4話を見た。本当に良かった。2話と3話で拭いきれなかった違和感の正体がようやく自分の中で整理できたのと、坂元裕二が今まで積み上げてきたキャリアと手法を半ば投げ出して何をやろうとしているのか、自分の中でとても合点がいった。ほえーとか言いながら3回くらい見た。

泊まった同期が置いていった成城石井アメリカンクッキーが重すぎてどう頑張っても3日に1枚しか食べられない。

 

 

5/6

5月いっぱいで退職する職場の先輩を密かに送る会として焼肉を食べに行った。41歳と31歳と28歳(わたし)と21歳で食べる焼肉。調子こいて注文してたら目ん玉飛び出る数字が書かれた伝票がきたけど41歳が払った。まじで人の金で食べる焼肉だった。41歳を見送った後、煙草を吸う31歳と21歳と一緒に異様に広いコンビニの駐車場で話した。夜のコンビニの駐車場は妙に安心する。

 

 

5/7

緊急事態宣言延長のニュースにまた憤っていた。ひたすら。怒ったあとは無気力になってしまうのでなんとか奮い立たせて、またしても県境を跨いでマックス・バーバコウ『パーム・スプリングス』を観に行った。なんてことない映画だったけど、映画を見てなんてことないなんて思えるのも今や貴重なのよなあとホームで電車を待ちながら思ったりした。

 

 

5/8

連休中の夜更かしがたたり、日中が眠くて仕方ない。来るシーズン3に向けてNetflixで『マスターオブゼロ』を見た。数年前に見た時よりも遥かに自分のリアルタイムの体温に近くて刺さりまくってしまった。全エピソード全瞬間が素晴らしいしむちゃくちゃ笑ってしまった。シーズン1はやっぱり9話が大好きでレイチェルとデフが「こういうかんじでイクやついるよね」って感じで真似する演技が最高すぎて毎回笑っちゃう。

 

 

ここで書いた隙間の時間に、主に夜中とかに、知り合ったばかりのあまり深い関係じゃない人と話すタイミングが何度かあった。(何で知り合ったかは察してください)

会話をしていて優しい、聞き上手、とか言われることあるけれど、別に自分がそういう人間じゃないことも自分が一番よく知っている。自分はただ人のことを簡単に否定したくないだけ。ただそれだけ。多分相手は否定されないから「自己肯定感を高めてくれる存在」として自分を見ている。ような気がする。だから連日のように夜になると電話が来る。

はて。自己肯定感。なんだか聞き慣れた言葉に思えてよくよく考えるとわからなくなる。ここ数日もやもやとそのことを考えていた。誰かに褒められたら嬉しい、それはわかる。誰かに強く否定されたら傷つく、それもわかる。自己肯定感。自己でしょ?自己だよね?自己紹介ってあるよね?あれって自分で自分のことを紹介することだよね?だからそれって自分が自分のことを肯定するってことだよね?

それを人から埋めてもらうってそんな悲しくて無意味なことないし、そんな悲しいステージからは自分は降りなきゃ、と思った。あなたのことはあなたが一番肯定してあげなきゃいけない。それは何にも代えられない。自分に自信がないのはわかる。こんなことをうだうだ考えているところとか、自分も自分のこと本当に好きじゃないし、すごくわかる。

でも、自分の好きなもの、例えば音楽や映画でもいい。何人かの友達でもいい。数多くあるものや数多くいる人の中から、それやあの人を選び取れたことだけは心底自分で自分を褒めてあげたい。とは思える。それなら自分で自分を肯定できる。

もっと言えば、自分の思ってる気持ちがなんとなくだけど文章にできたときとか、読み返してちょっと良いじゃんって思える。こともたまーにだけどある。それでいい。どんな形であれ自己表現って本当に大事ね。

 

 


 

とはいえ埋まらない寂しさを抱えながら人は生きてるんだよなあ。とか踊り場のこの回を聞いていつも思ってしまう。地味だけどむちゃくちゃ好きな回。

 

空気階段の踊り場 #108【アフタートークマッチングアプリと孤独感

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