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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

2016年マイベストムービー30 [21~30]

いろんなところで言われていることですが、今年は洋邦問わずとても豊作の年だったと思います。それゆえ、昨年どおりベスト20にしようと思ったのですが、とても選びきれず、これも良い、いやでもこれも良いみたいなことの連続になったのでベスト30にしてみました。分母は70本です。

昨年に比べて、今年は劇場で新作を見る回数がとても増えた。それだけ見たいものも多かったのだけど、意識的に行くようにしたというのもあるかもしれない(学生最後の年だし)。結果、やっぱりレンタルDVDで見るものより劇場でみたものの方が圧倒的に上にくる率が高かった。ベスト10は全部そう。まあそりゃそうよねってことで来年も足繁く通いたい。それでも、公開規模の小さいものは地方まで公開がまわってこなくて悔しくもある。ミニシアターを作って!とまでは言わないけどシネコンでももうちょっとがんばってほしいなあ。それでいうと、「ドント・ブリーズ」とかは超楽しみにしているのだけど、公開が年明けまでないためまだ見れていません。

昨年は「映画を見終わった後どれくらいその映画のことを考えたか」というのを一本の指標にランク付けしました。今年は「映画の映画らしさ。映画にしか出来ないこと。」という指標にのっとって、まあそうは言ってもあくまで好みでやっていきます。つーか!映画に順位なんてつけるもんじゃないからな!!!(某氏風)

 

 

 

30. さざなみ

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結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。

人生はやり直せるだとか、間違った道は選び直せるだとか、そんな生易しいことはやっぱりありえない。いつだってそこには、選んだ道と選ばれなかった道がただ横たわっていて、その二つが波のように干渉し合い、ゆらめく。最後のシーンでジェフは「歳をとると選択することはなくなる」とか抜かしてたけど、きっとそんなことはない。ケイトがこれからの人生を自らの手で選べるとするなら、(皮肉かもしれないけど)この映画はもしかしたらそんなに閉じた映画じゃないのかもしれない。

 

 

 

29. ロスト・バケーション 

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サーファーで医者のナンシーは、休暇で秘境のビーチにやって来た。時を忘れ、日が暮れるまでサーフィンを楽しんだナンシーは、海中で突然何かにアタックされ、足を負傷してしまう。なんとか近くの岩場にたどり着いたナンシーは、岩の周囲を旋回するどう猛で危険な存在が自分を狙っていることに気がつく。岩場から海岸までの距離はわずか200メートルだが、時間とともに潮が満ち、海面が上昇。足下の岩場が沈むまでの時間は、わずか100分しか残っていなかった。

サメvsヒト、タイマンのガチンコ真っ向勝負!それだけでもう歓喜なのだけど、間違いないシンデレラストーリーにもなっているのが最高。おまえに牙とエラがあるなら、こっちには経験と知識があるんだよ!そしてなにより、"今までやらずに諦めてきた奴"が最後に自らやることを選びとる映画なのですよ!!!極め付けにランタイム86分。最高かよ。

 

 

 

28. ちはやふる 上の句

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幼なじみの綾瀬千早、真島太一、綿谷新の3人は、新に教わった「競技かるた」でいつも一緒に遊んでいた。新の競技かるたにかける情熱に、千早は夢を持つことの大切さを教わるが、そんな矢先に新は家の事情で遠くへ引っ越してしまう。高校生になった千早は、新に会いたい一心で「競技かるた部」創設を決意し、高校で再会した太一とともに部員集めに奔走。なんとか5人の部員を集めて競技かるた部を立ち上げた千早は、全国大会を目指して練習に励む。

もちろん突っ込みどころはある。クサさもある。でもそんなことどうだっていい!ラスト1時間のかるた試合のシーンでここまで熱くなれるんだから最高じゃん!!で、その熱さは若さとか勢いから来てるかっていうと決してそうじゃない。物語の中で、ごく自然に見ている僕らにかるたにおける最も重要な「詩」の内容を染み込ませてるからでしょう。だから後半の流れにこんなにも感情移入できると思った。あとは、視点の入れ替えね。机くんの登山のシーン然り、千早を見る太一然り、文字どおりその人の立場に立ってこそ、その人の感情がわかるんじゃないだろうか。余談ですが、下の句も結構楽しめたし、松岡茉優絡みのシーンは総じて良かったのだけど(実際泣いている)、序盤のげんなり感がけっこう大きかったな…。

 

 

 

27. 君の名は。

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これはあらすじとかいいよね????いいね????

とりあえず!思春期にリアルタイムで「秒速5センチメートル」じゃなくて「君の名は。」を見れる少年少女たちよ、とても幸せだぞ!!!!おじさんはうらやましい!!!例えば、何かを美しいと思う気持ちとか、誰かを好きだと思う気持ちとか、好きな人を守りたいとか、そんな至極普遍的なことを新海誠という人がこんなにもまっすぐに描いてくれてとにかく嬉しい。そして辿り着く着地点が、こんなにたくさんの人の中に自分の運命の人がいる、そして出会うことが出来る。ってのが素晴らしくないすか?正直、これを見るまで新海さんの作品を一通り見返していて、あれだけ昔は崇拝していた「秒速5センチメートル」を見てとてもげんなりしてしまった。今見て思ったのは、やっぱ掴み取りたいと思うものがあるなら、ぼろぼろになったり惨めになったりしても走り出さなきゃ駄目だと思うんだよ。ということで、それが「君の名は。」で再現されていて嬉しかった。これだよ!!これ!って心の中でガッツポーズでした。

 

 

 

26. デッドプール

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好き勝手に悪い奴らをこらしめ、金を稼ぐヒーロー気取りな生活を送っていた元傭兵のウェイド・ウイルソンは、恋人ヴァネッサとも結婚を決意し、幸せの絶頂にいた矢先、ガンで余命宣告を受ける。謎の組織からガンを治せると誘われたウェイドは、そこで壮絶な人体実験を受け、驚異的な驚異的な治癒能力と不死の肉体を得るが、醜い身体に変えられてしまう。ウェイドは、赤いコスチュームを身にまとった「デッドプール」となり、人体実験を施したエイジャックスの行方を追う。

開始2秒の字幕だけで「HAHAHAHA!」と出して笑ってしまった。今更メタヒーローなんて!って捻くれた目で見ちゃいそうだったのだけどそんな暇なかったし、なによりこれって至極真っ当なヒーロー映画かつラブストーリーだ。自分の容姿にコンプレックスがある男が、好きな女性に話しかけられなくて、それでも彼女がピンチのときには助けに行きたい!ってめっちゃ王道じゃん!

 

 

 

25. 死霊館 エンフィールド事件

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1977年、イギリス・ロンドン近郊の街エンフィールドで実際に起こり、史上最長期間続いたポルターガイスト現象として知られる「エンフィールド事件」を題材に、英国の4人の子どもとシングルマザーが体験し、ウォーレン夫妻が目撃した怪奇現象を描く。

これは間違いなくホラー映画の金字塔的作品でしょう!ビジュアルの怖さ?いやいや。ビックリ演出?いやいや。ジャーン!みたいな音?いやいや!!!そこに何がいるかわからない漆黒の暗闇が一番怖いじゃないですか。明らかに何かが潜んでいる空間を日常の中に作り出されるともう逃げ場はない。最後の手段である布団に包まるという行動も、呪怨とは全く別のアプローチで崩される。こわー。前半は電気が消える、テレビが消える、扉が開く等々教科書的なホラー手法のあの手この手で存分に楽しめる。でもこの映画の映画たる真の所以は、ホラー映画から「家族」を描き出しているところでしょう。まさか、ホラー映画の中でエルヴィスの曲で泣かされるとは思わないでしょ?

 

 

 

24. クリーピー 偽りの隣人

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元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の生き残りである長女の記憶を探るが真相にたどり着けずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。ある日、高倉夫妻の家に西野の娘・澪が駆け込んできて、実は西野が父親ではなく全くの他人であるという驚くべき事実を打ち明ける。

物語の整合性を捨ててまでとことん気味の悪いショットを重ねていくところがなんとも清々しかった。特筆すべきはやはり「窓」と「風」でしょう。例えば、大学で川口春奈を聴取するシーンの窓の向こうの学生の多さとその動きよ。明かりの明滅と同時に、本来不規則に動くものが、規則的にしかも群れをなして動き出す気持ち悪さ。または、西野家に吹き込む風の何たる不気味さよ。次第に竹内結子を多い始める風。扇風機の風。換気扇の風。カーテン。ひええ。気持ち悪い!前半のパッシブなヤバさがすごく好きだったので、後半の表立ったサイコさには正直そこまでの衝撃を感じなかった。ネジの緩さを楽しむにしては致命的な脚本の穴もあったような気もする。まあそれもありきだけどねー。

 

 

 

23. ヘイトフル・エイト

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舞台は山の上のロッジ、登場人物は吹雪でロッジに足止めを食らい、一夜をともにすることとなったワケありの7人の男と1人の女。そこで起こる密室殺人。一体誰が、何の目的で?吹雪が作り出す密室で、疑心暗鬼で張り詰めた緊張をほぐすため、またお互いを探り合うため、他愛のない会話をかわす面々。やがてそれぞれの素性がすこしずつ明らかになり、偶然集まったかに見えた彼らの過去が繋がり始めた。そこで再び、予想を超えた出来事がー。

劇場はシアター8で、席番号も意図せず8で、そして見逃さなかったぞ。劇場にいたのは自分含め8人だった!!!!!!!今まではそんなに熱を入れてタランティーノ作品追ってたわけじゃないけど、最高だった。最初の音楽が流れてタイトルがドーンと出たところからずっとドキドキしてた。見ながら、あ、今ドキドキしてる。って思ったの久しぶりだった気がする。わー!これから映画が始まるぞー!みたいなどきどき。とにかく喋りまくる映画なので、個人的には「水曜どうでしょう」が好きな人は絶対に好きになると踏んでいる。無駄だけど過剰じゃない。意味はないけど冗長ではない。ただ罵倒しあう会話に愛を見出せる人なら大好きなはず!

 

 

 

22. ヴィクトリア

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目も眩むようなクラブの照明の中、家出少女のヴィクトリアがひとり激しく踊っている。やがてフロアを離れ、バーで一杯飲み、外に出る。4名の青年に声をかけられ警戒するが、どうやら悪人ではないらしい。深夜スーパーで酒を盗み、青年たちの家の屋上で酒盛りを始める。身の上話などをしながら、場所を変えて楽しい時間が流れていく。しかし、青年のひとりが大物ヤクザの絡む金銭トラブルに巻き込まれていることが分かり、事態は急変してゆく…。

140分ワンカットってふれこみの時点でやばい映画だとは思っていたのだけど、じゃあワンカットで撮るのにはどんな意味があるのかと気になっていた。疑うまでもなく、この映画にその意味はあった。真っ暗な中を道もわからずにふらふらと彷徨う彼等が、140分という時間のあいだに思ってもみない選択をし、その選択が思ってもみない結果を生んでゆく。そのドライヴ感と時間の連続性。過ぎた時間はもう戻らないという絶望(でも希望でもいいよね)。その果てに朝を迎える。

 

 

 

21. 海よりもまだ深く

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笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男、良多。15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家で、今は探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母の淑子だ。ある日、たまたま淑子の家に集まった良多と響子と真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなる。こうして、偶然取り戻した、一夜かぎりの家族の時間が始まるが――。

紛れもない是枝さんの映画だった。「歩いても歩いても」のアンサーというのも頷けるけど、それ以上にこの映画は「奇跡」でもあり「そして父になる」でもあり「海街diary」でもある。詳細な感想は以下の記事に。