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神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

同じ空を見ている - 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう/第8話』

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あのどこを取っても素晴らしい第7話を見れただけで、この2016年に生きた意味があると言っても過言ではなかったのだけど、そんなドラマの続きとその後の『SMAP×SMAP』において、僕が胸を張って大好きだと言えるバンドであるceroSMAPが共演を果たすという瞬間が連続で見れるなんて、本当生きていればいいことある、だなあ。はい。いきなり話がずれたのでここまで。

練が引っ越し屋さんへと帰ってきた第7話のラストは練が音のことをまっすぐ見つめる、というカットで終わっていきました。ということは、です。そりゃここにきて練は動き出しますよね。5年という月日は波平さんの声を変えて、タラちゃんを小学生にして(佐引さんの嘘に悪意が微塵もなかった。良い嘘。)しまったけど、彼は引っ越し屋さんへとしっかり帰ってきました。

対して描かれるのは朝陽。第7話でも彼が心を殺し続けてきたゆえの変化が残酷なまでに描かれていました。彼にとって古い空き瓶は花瓶にはならないし、狭い部屋には居る意味はないし、縋り付いていた介護の仕事は「あんな仕事」になってしまった。それでも音の中では「ある言葉」だけが変わっていく朝陽をぎりぎりで繋ぎとめていた。それは朝陽が認知症になってしまった入居者・園田さんにかけたこの言葉。

星を見るのは好きですか。

僕はね、星が好きです。

一万年っていう長い年月を経て届く星の光を見ていると、何だか優しい気持ちになれます。

人の命や想いも長い時を超えてどこかへ届いていくんじゃないかなって思います。

そんな園田さんの話を練にしながら音は何をしているのかというと、ペンで星の形を作っているのです。特に触れるでもなく。この言葉も然り、ビルの屋上で望遠鏡から二人で星を覗いた事も然り、音の中での朝陽はまだ「何かが届くことを信じる人」だったはずです。でもそんな希望は奇しくも朝陽自身の手で打ち砕かれてしまいます。「発想を変えてみましょう」と口癖のようにつぶやく彼はモノや人を自分に必要か不必要かという、単なる価値でしか測れなくなってしまった。まさにそれは後に音の口から語られる「一等のテレビゲームを転売する人」の姿ではないでしょうか。まさしく同じ物差しを持っている彼の父も音の出自を聞いて、そんな結婚は認めないぞ!なんてステレオタイプなセリフは発しない。彼が言うのは「幸せになりなさい」という言葉。ん?この人はいい人なのか?いや、違う。彼の物差しでは貧乏人の音は御曹司の朝陽と結婚することで「幸せになれる」のだ。たったの一言で彼は残酷なまでにこれまでの音の幸福を全否定してしまった。なんとまあ。

この時の会話で少し想像力を働かせてみる。東京でしていたアルバイトは?という問いに対して音は少し後ろめたそうに「ガソリンスタンドとか。」と答える。この間は何か。序盤でスルーしていたけれど彼女が来たばかりの東京でなぜガソリンスタンドというアルバイトを選んだのか。トラックだ。きっと引っ越しトラックが給油に来ることを考えたからではないだろうか。でも結果的にそこで出会ったのは朝陽でした。だから図らずもその返答をするときに頭に浮かんだのは練の姿だったのではないだろうか。

もうここまで来たら二人を対面させるしかないでしょう。音のアパートを前にして交わされる会話は第1話の二人の出会いのリフレイン。

「泥棒」

「違います。引っ越し屋です。」

 

「ストーカー」

「違います。引っ越し屋です。」 

 あのときめきに溢れたファミレスの会話から6年という月日を経て、再び真正面から向き合って二人は会話する。好きなものを交互に上げていく流れは坂本作品ファンならもうそれだけで満足ですよね!!!!!落としたフォークを拾おうとして手が触れるなんてベッタベタなシーンも、ケーキ→ジャンケンという段取りをしっかり踏むことでときめき指数がぐいぐい上昇していきます。そして練の絵を描く音。これは深読みかもしれないけれど、先述した朝陽の話をしながらペンで星の形を作るというシーンを思い出してみると、二人に対する思いの違いが表れているような気がする。同じペンでも、何本も使って形どるのか、たった一本でその人を描くのか。これって大きな違いだと思う。第3話の木穂子の手紙にも似たラインがありました。

練、あなたと付き合いたい。
あなたを恋人だと思いたい。
買っ
たばかりの新しいペンで、思う存分あなたを好きだと綴りたい。

そうして二人は、対面したまま幼少期の音が見た空に辿り着く。この瞬間こそ、時間や距離を超えて何かが届いたのではないか。今この2016年に二人は同じ空を見ているのではないだろうか。

さあ、残り2話です。次回も大きく話が動きそうです。余談というには結構重要かもしれませんが、音が神戸から北海道に移った21年前って…。そうか。そういうことなのかな。あえてそれについては明言されないような気もするけれど、どうなのだろう。