読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

anomeno

神様の気まぐれなその御手に掬いあげられて

月が綺麗ですね - 『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう/第4話』

いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう

f:id:moire_xxx:20160209130332p:plain

いやあ。予告の時点からこれは心して見ねばと思っていたけれど第4話にしてこうなってしまうのか…。そこかしこで「重い」という言葉が飛び交っているこのドラマですが、この第4話は確かに重いながらも、月曜21時のラブストーリーという役割をこれ以上ないほど担っていたと思う。だってこんなにも「すれ違って」いるじゃないですか!細部まで気の利いた演出も、役者陣の好演ももちろんのこと、ドラマとしてのラブストーリーの最重要事項である(と僕は思っている)すれ違いをこんなにも丁寧に描いているということをまずは改めて讃えたい。

先述した「すれ違い」について。3話にて音と練の間で交換された「花」という名の一つの想いはあっけなく冒頭で木穂子に渡されてしまい、写真まで削除されてしまう。音が買おうか迷っていた電気ストーブは朝陽から渡され、最後まで練の手から渡されることはなかった。と考えると、練は音にとっての「引っ越し屋さん」という役割から離れていっているのかもしれない。今週は音の口から「引っ越し屋さん」って聞いてないような気がする。ただ「たこ焼き」に関しては、練がバスから落ちたのを見ていようが見ていまいが(個人的には見ていなかったと思うし思いたい)、不本意に届けられたものであって欲しいと思うし何よりその後の会話を考えると絶対にその方がいいような気がする。これに関しては最後にまた触れます。

回を重ねるごとに、細かいけど重要な演出の積み重ねが生きてきた場面が多かった。一つは二人の位置取り。川を越えてボールを投げたり、橋を渡ったり、横断歩道を渡ったり、バスの両脇の座席に座ったりと、対岸を越えたり離れたりする二人。4話ではもはや平行ですらない位置まで離れてしまっていることがバスの位置からもわかる。そして電車から逃げてきた二人を襲う悪意。「別にいいんだけどさ、世間はどう思うのかな。」という言葉の何たる絶望感。宙に浮いた所在のない悪ほど怖いものはない。そんな悪意に晒された音を救う、いや救うなんて言葉はクサイな。寄り添うのは練しかいないのはもう先週のあの会話を聞いていたらわかる。そして寄り添うためには隔たりを越えて二人は並ばなければいけないのだ。

同時にもう一つの演出である「方言」について触れる。この隔たりを越えるシーン然り、誰が、誰に対して、どんな時に話すと方言が出るのか。というのが徹底されてるなと驚いた。方言の役割については少し前にも触れましたが。

 例えば、練が小夏に話す時には必ず方言だよなあとか、音は職場ではほとんど関西弁は出ないよなあとか、練と木穂子が話す時は木穂子は九州の訛りが出るけど練は割と標準語だよなあとか。今回のバスのシーンで言えば、練の「ここを譲ってしまったら自分じゃなくなってしまう」という状況で振り絞った言葉のはずだからやはりあの言葉でなければならなかったのだろう。ただ、バスの中の悪の描写で舌打ちや携帯はいいとしても、最後の下着拾って云々は過剰な気もする。あれがなくても十分伝わる。

そして方言が印象的に描かれたもう一つのシーンとして佐引さんのシーンがあった。あのシーンで「田舎に帰れ」とことあるごとに練に言っていた佐引さんの言葉の向きがぐいーっと自分のほうに帰ってくる。あれはやはり東北訛りなのだろうか。ここへきて高橋一生の演じる人物に重みと立体感が出てきて良い。流石。

と、演出について細々述べました。最後にすれ違いの果てについてまとめるとすると、僕はこのドラマは正直ここで終わっても良いんじゃないかとさえ現時点で思っています。だってあの会話の後にたこ焼きを食べて笑う二人の姿を見てまさに「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」じゃないですか!近づいて、離れて、で最後にはこれ以上ないほど二人は近づいたのにそれは決別の上なんて、とても悲しいよ?悲しいけど、花は音には届かない、電気ストーブも届かない、だけど音が落としたたこ焼きを知らぬ間に練が拾って届けるように、すれ違った上で二人は繋がってるじゃないですか。これってめちゃくちゃ坂元裕二イズムじゃないですか?????んで、最後に練ではなくて木穂子が音に「月が綺麗ですね」って言葉をかけるのもニクすぎる。夏目漱石もプンプンですよ。

とはいえ来週にはついに「あの日」が来てしまうわけで。終わってもいいとか言っておきながらまたあーだこーだ来週も言っているのでしょう。しかし、小夏と晴太のパートには未だ全く乗れないなあ。なんかうまい対比とも言えないし、ごっそり取っても今のところ話として成立するしなあ。と最後には不満で終わっていますが書いているうちに熱が上がってしまうくらい良かったです。