2015年は意識的に映画をたくさん見ようと思った年でした。タマフルを聴き始めたというのがきっかけの一つであったとは思うのだけど、何かを好きだと胸を張って言えるように積極的に行動しようと思ったのも理由の一つだと今では思います。「動かない古参よりも動くニワカ」だと心がけました。小言ですが、ことSWに関して言うと、昔から見てきたのに何故か新作に行き倦む人の何たる多さよ。自分はリアルタイムから見てきた人たちに比べれば思い入れはどうしたって少ないのかもしれないけど、その分を埋めるには今学ぶしかないと思うんです。それに、一年の中で一本の映画が公開されているのはせいぜい2ヶ月くらいなんだから、その時に見なくてどうすんだっていうか。1800円でこんなに楽しんだり考えたりできるってめちゃくちゃお得だし、そういう点でこれまでの自分と比べて、ぐらっと価値観が変わった年になりました。そんなこと言いながら見たいと思っていても見逃したものはたくさんあったのだけど。そもそも地方で公開がなかったものとか…。その辺は仕方ないかなと思いながらも歯がゆい気持ちです。(「フレンチアルプスで起きたこと」「EDEN」「ヴィジット」「ゴッドヘルプザガール」等々挙げたらきりがないけど…)
ということで、最初はベスト10にしようかなとも思ったのですがそうすると思いのほか選外が出てしまうため20にしました。あと、都内では2014年公開のものでも遅れて地方公開された作品とか、2014年12月末とかの作品も入ってますがそこはまあアレ。分母は50ほど。で、単純な好みの順でもありますが、順位付けの際に「如何に見終わった後にその映画のことを考えたか」というのを一つの基準として設けました。見ている時の瞬間最大風速的な面白さだけではないよ、ということです。では。
20. 22ジャンプストリート
日本では DVDスルー。前作「21ジャンプストリート」に続いてジョナ・ヒル、チャイニング・テイタムのコンビ感もすっかり板について最高。おそらく監督のクリストファー・ミラー、フィル・ロードコンビは与えられた題材でふざけ倒すことに全力を注いでいるのだろう。今回であれば「まさかの続編」である今作を徹底的にいじり倒して、尚且つ永遠にシリーズを続けられるという延命までしてのけてしまった。次回作にも期待。ちなみにスターウォーズのスピンオフ作品としてハン・ソロとチューバッカの物語をこの監督コンビが担当するらしい。楽しみすぎる。
19. 岸辺の旅
映画の演出という点において、一時も目が離せない映画だった。言葉ではない情報量の何たる多さ。生きている人物を覆う影、今はもういない人に注ぐ光、生きていたって死ねる現実をこんなにも美しく描けるということに感動した。かと思えばホラーばりにゾッとするカットや照明の消し方、当て方。下手に怖がらせるよりもよっぽど怖い。そういえば、この映画を見ている時に背後から話し声がしてかなりゾッとしたのだけど、実はおばさんたちが携帯の電源の消し忘れ云々で他の客ともめている声でちょっと安心したという映画体験があった。
18. キングスマン
ヒュー!最高!そこのあなた!結局は「Manner makes man」ってことですよ!これも続編が決定ということで楽しみ。スパイ映画ってそんなに見てこなかったからこんなに荒唐無稽でも全然OKむしろ清々しい。半端じゃなく何かに腹が立った時、脳内ではおそらくあのシーンがよみがえることでしょう。僕はエグジーが犬を撃てないってところも一つの彼の個性だと思いたかったから(弱さと捉えればもちろんそうなのだけど)、確かにあるきっかけで彼はその覚悟を決めて一線を超えるのだけど、彼が最初から持っていた内面の良さも尊重されたらなあという無い物ねだりの気持ちもある。
グルメ映画であり、ロードムービーであり、紛れもない親子映画でもある。今までロードムービーは、土地や風景の美しさこそが醍醐味だと思っていたのだけどロードムービーこそ人と人とが思いを通わせあうものなのではないだろうか。同じ景色を見ても、親子でも恋人でも思うことは違うからこそ、自分のではない考えや思いを汲むきっかけになるのではないだろうか。今作でいえば、そこに料理が重なってくるのもまた最高。ラストに関しては自分はどうしても「そして父になる」を連想せざるをえなかった。親が子を見るという一方向の視点じゃなくて、子供だって親を見ているということ。なんつったって出てくる料理がことごとく美味しそうなのがそもそも映画の説得力に繋がってるのではないでしょうか。夜見たら最後、何か食べざるをえないです。
16. ビッグ・アイズ
見た当初はあまり噛み砕けていなかったのですが、時間が経つにつれてどんどん好きになっていった気がする。その余韻の原因はクリストフ・ヴァルツでしょう。見ながらとにかくウォルターに腹が立って仕方なかったのだけど、ラストのざまああああああああな展開でなぜかそんなにすっきりしなかったのは、同時に彼のことも完全には憎めなかったからじゃないかな。だって嘘をついて引っ込みがつかなくなったことって、まああるじゃん?彼はそれが幾ら何でも行きすぎなんだけど。というか嘘をついてる自覚もないのかもしれないけど。身の回りにも嘘つきはいるけど、たまには見逃そうと思います。
15. サンドラの週末
この徹底したミニマルさに天晴れ。これ、話の内容的にはめちゃくちゃ暗くしたり、ともすればドラマチックなんかにもできたりするはずなんだけど、暗くも明るくもない。状況はスリリングなのにテンションはフラット。多分それって、サンドラの「歩く」という行動やその速度こそが映画自体のテンションを決めているからではないだろうか。全体を通して何度も描かれるサンドラと同僚の間に存在する隔たり、一人一人のその微妙な違い。結末に関しても、いくらでもがっかりできる終わり方はあるはずなのに個人的には絶妙な着地点だった。そう、隔たりを越える必要はない。そこを避けて歩き出す勇気があれば。
14. バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
これに関して語るにはいささか自分の眼と語彙が未だ足らないとも思うので、エマ・ストーンが最高だったということではダメでしょうか。もちろんオールワンカットに見せる撮影手法とか、ドラムのみの劇伴も言わずもがな。というか、映画館でなんだかわからないけどすごいものを見たという感覚が一番強かった気がする。モヤモヤしながら、でもスキップしちゃうみたいな。ソフトもレンタルしたので繰り返し見たい。
13. ストレイト・アウタ・コンプトン
はーい!きましたー!今年映画館で見た最後の映画でした。個人的な話をすると、この2015年は自分の中でのヒップホップ元年でした。ケンドリックラマーから火がつき、SIMI LAB、RHYMESTER等の日本語ラップ、高校生ラップ選手権など手当たり次第触れていき最後に行き着いたのがこの映画でした。まず、今年見た映画の中でも最初のタイトルどーん!のタイミングが最高にかっこよかった。黒人差別や時代背景を含める始めたきっかけはどうあれ、あいつらみんな同じものを見て同じものが好きで、同じ場所に行きたくて、それで音楽やってたんだろうなあ。それって今の時代でもさ、ヒップホップに限らずバンド組んだりとかさ、純粋な音楽への触れ方じゃないですか。だからあの、イージー・Eが初めてラップをする場面は音楽が好きな誰もが心動かされるんじゃないだろうか。その結果あれだけのムーヴメントを起こしたっていう音楽の説得力は言うまでもないし、音楽映画が多かった2015年でも一番真摯な音楽が持つ希望のようなものを描けていたと思う。
12. 百円の恋
一子が始めるものが何故ボクシングでなければならないのか、何故短期間でプロ試験に合格するほどにまでなれたのか、一子が走り出す、髪を切る、リングに立つ、倒されても立ち上がる、泣く、そのすべてに筋と意味がある。それを説明する言葉なんていらない。それが映画だからさ。負けて負けて倒されて、そこから脱するためには自分の足で立上らなきゃいけない。スパーリングをする姿を外から見つめる、試合のチケットを渡す、ボクシングゲーム、リングの上と客席、序盤と終盤で対になる構成が見事。
11. Mommy
やはり触れなければならないのが、インスタグラムアスペクト比の演出について。前作「トムアットザファーム」でも効果的に使われていたアスペクト比演出ですが、あの時はあくまで個人的に「どやっ!」感が否めなかったのだけど、今作はそのポイントを象徴的な一点に絞ることで得られるカタルシスが半端じゃないものになっている。加えてそんなマジックタイムが終わりを告げた時に、これまで以上に現実と向き合う姿勢が作られる効果もある。ラストに関しては、自分は希望を強く持って受け取った。でないと、やってられないというのもあるのだけど、あれこそがダイアンの、スティーブの選択なんだから。こんな映画が2015年にリアルタイムで観られるのだから幸せだ。希望。
明日にはトップ10を書き上げたい…。